新しい年号となる2019年の幕が開きました!【2019年01月07日号】
さまざまな場面で「平成最後の…」というフレーズが聞かれた2018年年末。何とも言えぬ寂しさを感じたものです。天皇の退位は約200年ぶりということ。平成最後の年に出発した高校交換留学生たちは、この歴史的な出来事が起こる瞬間を海外で過ごしながら、どのような気持ちで日本を思い出すのでしょうか。
今年もまた5月のゴールデンウィークに米国団体の代表団が派遣プログラムオリエンテーションに参加予定ですが、彼らからのメッセージにも天皇退位・即位の時期に来日することに“What a momentous occasion!”とコメントがありました。海外の人たちにとっても日本の天皇の存在は大変関心のあることのようです。日本からの代表として派遣されている高校交換留学生たちは、留学先で天皇制の歴史や日本人の天皇に対する意識等、さまざまな質問をされるかもしれませんね。「さすが日本からの留学生は自分の国のことをよく勉強しているね!」と感心されるよう頑張ってほしいものです!
「頑張れ!」
年末年始に何人かの留学生たちからカードやメッセージが届きました。
12月中旬に日本から送付したLove Letter Aが届いたことや、1度もホームシックにならずに頑張っているというホッとする報告、まだまだ満足できない現状を打破したいという相談事、突然書きたくなったらしい(?)「気まぐれ近況レポート」など内容は様々でした。
その中の一つに“Thank you for your love letter!”という件名で「おかげで悩んでた気持ちがちょっと軽くなりました!これからも頑張ります」というメールがありました。短い文章でしたが、これまでたくさん苦労して、自分一人で解決策を見つけようと必死だった気持ちが伝わってきました。そして、こちらからの手紙が、この留学生がたった1ミリでも2ミリでも前進するきっかけとなったことを知りとても嬉しかったです。この留学生のメールに「頑張れ!」とつぶやきながら、「頑張れ!」と自分自身をも励ましていることに気付きました。
高校生交換留学プログラムの参加者は、日本の高校生活を「途中下車」して海外に派遣されています。彼らは途中下車せずにそのまま日本での高校生活を継続していれば、さほど苦労せずに終点まで行ける子たちです。大きな決意をしてプログラムに参加しているこの子たちが「途中下車」したことを後悔しないようにするのが私たち団体の責務。だから私たちも頑張り続けなければいけない…留学生たちの言葉、そして存在そのものが私たちにとって励みです。
「頑張れ、留学生たち!頑張れ、自分!」今、1月末までに届くよう、現在アメリカ・オランダ留学中の皆さんへのLove Letter Bの準備中です。
2019年文際交流協会が目指していくこと
●「猪突猛進」ではなく「穏歩前進」
今年の干支は猪。「ひとつのことに向かって真っすぐに猛烈な勢いで突き進みたい」という意味で「猪突猛進」を今年の目標として掲げる人も多いようです。文際交流協会の掲げるのは干支に関係なく「穏歩前進」です。時代の変化に柔軟に対応しながら、緩やかに、穏やかに、そして着実に、一歩一歩踏みしめるように前進し、高校生交換留学プログラムを守っていきたいと考えています。●答えを見つけ続ける姿勢と努力を忘れずに…
「誰のための何のための『高校生交換留学プログラム』か?」
「高校交換留学生として求められる資質とは?」
「高校生交換留学プログラムをサポートする団体の在り方とは?」そして
「理想的なグローバル化に向けてプログラムができることは何か?」…
留学準備中、留学中、帰国後のプログラム参加者や保護者の方たちとの交流を通し、答えを探し続けていきたいと思います。最終ゴールはより多くの人たちが異なるものを認め、受け入れ、そして、それぞれの心がグローバル化していくこと…容易いことではありませんが、高校生交換留学プログラムも目標達成の一翼を担えるよう考え続けたいと思います。
●与え続けること…
数十年前にアメリカで出会った絵本があります。タイトルは “The Giving Tree”。1964年に出版されたShel Silverstein作の絵本です。その後、日本でも「大きな木」として翻訳本が出版されていますのでご存知の方もいるかもしれません。Once there was a tree… and she loved a boyとストーリーは始まります。この大きなリンゴの木は遊びに来る小さな男の子が大好きで、男の子も木のことが大好きで、毎日木に登ったり、ブランコをしたり、リンゴを食べたり、落ち葉を集めて草冠を作って森の王様ごっこをしたり、疲れると木陰でお昼寝をしていました。しかし、“男の子”は大きくなり、たまに木のところにやって来ては「いろいろな物を買いたいからお金が欲しい」「家が欲しい」「遠くに行ける船が欲しい」とリンゴの木におねだりを続けます。リンゴの木はそのたび、“男の子”がお金に替えられるようにリンゴを与え、家を作れるように枝を与え、船を作れるよう自分の幹を切って与え続けました。“男の子”に自分のできる何かを与え続けることでリンゴの木は幸せでした。そして、ストーリーの最後は、すべてを彼に与えてしまい切株しか残っていないリンゴの木のもとに、年老いた“男の子”が久しぶりに現れるシーンです。訪ねてきた“男の子”に「ごめんね、もう自分には何も与えられるものがない。本当にごめんね」と謝るリンゴの木に、“男の子”は「もう何もほしくない、何もいらない、ただ静かに休みたいだけ」と告げます。それを聞いたリンゴの木は嬉しそうに「だったらこの切株に腰掛けなさい」と自分自身に唯一残った切株を“男の子”に与え、”And the tree was happy”で幕を閉じます。
男の子に「与え続けること」で幸せを感じることのできるリンゴの木、そして、与えられるものを素直に受け入れ、自分では気付いていない大きな愛をお返しとしてリンゴの木に与えている男の子。この絵本と出会った瞬間から「他に与え続けるGiving Tree(リンゴの木)のような生き方をしたい」と心から思ったものでした。そしてその後、高校交換留学プログラムとかかわっていくうち、たくさんのGiving Treeのような方々に出会いました。時には自分自身の生活を犠牲にし、必要とあらば昼夜を問わずに留学生のために動きまわり、自分に相手に与えられるものは何なのだろうと常に考え、「異国から来る高校生たちに素晴らしい思い出を作ってあげたい」「留学生とホストファミリー双方に素敵な時間を過ごしてほしい」という思いに満ちた交流団体のスタッフやコーディネーターたち。そして、無償ボランティアで留学生を受け入れてくれるホストファミリーの方々の多くもまたGiving Treeでした。ある日本のホストファミリーは、一所懸命お世話した留学生が本国に帰国してから全く音沙汰がなく、でもある時、元留学生の知り合いが来日し、そのご家族に元留学生の近況と伝言を伝えた時「あ〜よかった。あの子、元気で頑張ってたんですね。本当に嬉しいです!」と、元留学生から全く連絡がなかったことを責めたり愚痴るのではなく、「いつか会えると信じています…日本に来たら私たちでできること、何でもやってあげると伝えてくださいね」とまでおっしゃってくださいました。
私たちも「見返りを求めず、他に与えることで幸せを感じるという生き方もあるんだ。」ということを、未来を担う若者に、自らの言動で示していける団体になることを目指したいと思います。
高校生交換留学プログラムは、私たち団体スタッフだけが頑張って成り立つものではありません。今年もまたたくさんの方々の力をお借りしながら、昨日より今日、今日より明日と少しずつ成長し、常に何らかの貢献ができる団体にしていきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。