高等学校等における国際交流等の状況について【2019年11月17日号】
文部科学省では、昭和61年度から隔年、全国の高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部における国際交流の状況を調査し、結果を公表しています。最新(平成29年度)の調査概要によると、日本の高校生の留学生数は4.7万人となり、平成27年度の3.2万人から1.1万人増加しているとのことで、着実に政府目標である「令和4年度に日本人高校生の海外留学生6 万人」に近づきつつあるようです。
この「留学生数」の全体数の変化は、比較的短期の3か月未満の研修旅行の参加者が3.2万人から4.3万人に増加したことによるもの。一方、3か月以上のいわゆる「高校生の留学」参加者は4,076人で、調査対象となった331万9千人の高校生のうち0.1%のみで、前回の調査から横ばい状態です。留学先は多い順にアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアとなっています。
3か月以上の高校生の留学参加者が増加しない理由とは…
3か月以上の「高校生の留学」の参加者が高校生全体の0.1%に留まったまま増加しない原因はいくつかあると考えられます。留学に興味や魅力を感じない、言葉の壁や海外での生活に対する不安、経済的な理由等の他、日本の大学への進学を考える高校生にとっては1学年間、日本の高校を離れることで受験勉強が遅れることが不安になることもあるでしょう。また、高校留学について学校の先生に相談した時、受験の妨げになると大反対されたという話も聞きます。しかし、高校交換留学プログラムに参加した多くの先輩たちは帰国後、留学前より明確な目的をもち、自分が勉強したいという学部・学科を選び進学しています。「受験に不利になるから」とあきらめるのではなく、先輩たちの体験談を聞いたり、相談することで、大学受験を含め自分らしい生き方ができるかどうかを判断してほしいものです。
留学についての正しい情報が高校生たち伝わっていないことも理由の一つかもしれません。以前「自分の学校には『1年間留学プログラム』がないから、留学ができるプログラムがある高校に転校したい…」というご相談を受けたことがあります。在籍生だけが対象となる1学年間の姉妹校留学を行っている高校はさほど多くはないかもしれません。しかし、公募している高校生交換留学プログラムは在籍校に留学コースがあるなしにかかわらず参加は可能です。なお、海外の高校で修得した単位を認めるか否かは在籍校の判断となります。また、「親からうちは部屋がないんで、留学生を預かれないから交換留学は参加できないって言われました…」という話を聞いたこともあります。交換留学の『交換』とは、人の交換ではなく、文化の交換の意。交換留学の参加者がご家庭で留学生の受入れができれば最高ですが、義務ではありません!
文科省の報告を検証しながら、外国からのお客様として扱われがちな短期の海外旅行や研修のみでなく、現地の人たちとの家庭生活や学校生活が日常になる長期の高校留学に参加し、日本が向かいつつある「多文化・多民族混住の時代」に柔軟に対応できる若者が増えていってほしいと願っています。
高校生の留学「3か月以上」について
文部科学省初等中等教育局国際教育課調査結果より抜粋
「強制送還」 「早期帰国」…
もちろん、高校時代の長期留学はよいことばかりではなく、残念な結果に終わってしまうこともあります。高校交換留学プログラムの場合、「強制送還」「早期帰国」が存在します。飲酒、喫煙、暴力等、留学先国の法律を破ったり、無断欠席を続けたり、誰にも告げずに一人旅に行ってしまったという「何かをやってしまったこと」が原因での「強制送還」「早期帰国」に加え、近年増えているのが「何もしなかったこと」での「プログラム停止処分による帰国」。ホストファミリーと全くコミュニケーションを取ろうとしない、部屋に閉じこもったままでてこない、周りの人のアドバイスに従おうとしないといったことで「異文化の生活に適応ができない」と受入団体から判断され、プログラム完了を待たずに帰国させられるケースです。
高校交換留学の場合、この「強制送還」「早期帰国」のケースは参加者の1%とも言われています。高校交換留学では、日本での選考試験に合格し、出発前にオリエンテーションを受け、さらに留学先国でも研修・オリエンテーションに参加し、様々な方法でサポーターに見守られていることもあり、この数は極めて少ないと言えるでしょう。しかし、少ないとはいえ、予定より早く帰国をせざるを得ないことがある…
このようなケースの場合、早期に帰国させられる留学生自身も苦しい思いをしますが、保護者、ホストファミリー、派遣団体そして早期帰国を決断した受入団体の関係者も自分自身を責めるなど、大変辛い時間を過ごします。「自分たちの育て方が悪かったのか?」「ホストファミリーとしてもっと留学生に対してやってあげられることはなかったのか?」、そして団体間では対象となる一人の留学生につき、昼夜を問わず24時間のやりとりが行われます。早期に帰国してきた留学生たちの多くは立ち直りが早く、振り返ることよりポジティブに前進することを選び、この辛い体験をバネに大きく飛躍していきますが、周りの大人たちはそれぞれの心の葛藤と向き合い、さまざまな後悔の気持ちが癒されるまでに長い時間を要します…
現在海外で頑張っている留学生たちに望むこと、それは高校交換留学生として守るべきルールを再度確認し、「これぐらいなら大丈夫だろう」という緩みがちな心を今一度引き締め、そして、もし前進しようという意欲が失せているのであれば、まずは殻から出て、すべてを自分だけで解決しようとせずに、まわりの誰かにSOSをだしてこの時間を乗り越えてほしいということ。3か月目に送ってくれた自分の心境やこれからの抱負を思い出し、自分自身のためだけでなく、あなたのことを想っているたくさんの人たちのためにも頑張ってくださいね!
2019夏出発生 留学レポートTより(そのD)
留学3ヶ月目の心境・これからの抱負は?
【語学の向上】
- 英語力をもっと伸ばす。
- 自分が満足できる英語になるまで、帰らないという気持ちで頑張ろうと思う。
- 日本にいるよりも英語の上達がほんの少しでも感じられる今、もっともっとって気持ちがものすごく強い。だから、いろんなことにチャレンジするのが楽しいし、本当に頑張ろうと思う。
- もっと人とコミュニケーションをとって自分の英語に自信をつけたい。
- 英語をネイティブのように使いこなし、他の国の人々の経験や考えを学びたい。
- もっと英語を話すように頑張ります。
- 携帯の使用時間を控えて、英語を上達させる。
- もっと10代の使うような言葉が知りたい。
- 英語がペラペラになりたいです。
- 想像と違うことがあったりして、大変なこともありますが私のことを支えてくれている周りの子に感謝し、少しでも早くオランダ語が喋れるようになりたいで。
- しっかりとオランダ語を勉強して、授業が分かるようにしたい。
【友達づくり】
- 友達を沢山つくれるように自分から動いていきたい。
- 今はとても楽しい。今後はもっと友達を作り、明るい未来を実現させる。
- 冬のクラブが始まったら、ステキな友達を作りたい。
- もっと友達をつくる。
- やはり授業で一緒の子たちよりも、クラブが一緒の子の方が近い存在に慣れると思うので、一年を通して各シーズンで色々なスポーツに挑戦して友達も沢山増やしたい。
- 学校や家族に恵まれているから今のところ全く辛くない。つらいことがあってもすぐ忘れられるくらいの辛さ。最初にできた友達を大切にして頑張ろうと思います。
- もっと友達を作り、時間が足りないと思えるくらいの充実した生活を送れるよう夢中になれることを探す。
- もっとちゃんと友達を作る。
【その他】
- まだ不安だらけだが、10ヵ月後成功して帰れるように一生懸命頑張りたいと思います。
- ホストファミリーといい関係でいる。
- 太らないで、アメリカ美女になる。
- 楽しむ、勉強しっかりする。ホームシックにならなさすぎて少し心配。
- 家族に会いたい。街でファミリーをみたり、ホストファミリーをみてたりすると、日本の家族との思い出が頭に過ってしまう。何かをしてても、楽しい事をしてても、時々それに関連する家族との思い出が過って、会いたくなる。留学前、もっと家族との時間を大事にしていれば良かったと思った。でもホームシックになるほど、私には「会いたい」と思える大好きな家族がいて、ステキなたくさんの思い出があるんだなと思った。だからホームシックだけど、悲しい、寂しいだけの感情ではない。頑張れるためのエネルギーになっている。
- これからも楽しみたい!
- カウンセラーに学校のことは相談できて、ホストファミリーとの関係も上手くいっている。このまま上手くやっていきたい。
- 明るく積極的に頑張る。感謝の気持ちと好意をしっかり伝える。
- 環境に甘えない。
- 日本の友達に会えなくて寂しいと感じる時もあるが、引き続き頑張っていきたいと思う。
- もう少し上手に時間を使えるようになります。
- 周りの人が私(留学生)に求めているものが何なのか具体的に知るために色々探ってみて、見つけたら実現できるような計画を立て実行する。
- もっともっと家族たちに日本食を振る舞いたい。
- 子供と関わるボランティアをしたい。
- 讃美歌を3曲完璧に覚えたい。
- ただただ向上し続けたい。