1年の終わりに…【2019年12月27日号】
クリスマスの後、過ぎ去った1年を振り返ることがいつの間にか恒例行事のようになっています。派遣プログラム並びに受入プログラムで起こったさまざまな出来事を振り返り、「〇〇〇の問題はどうして起こったのか?」「オリエンテーションでの指導は適切だったのか?」「派遣生たちに出発前に伝えるべきことはなかったのか?」「受入生の問題として報告されたことの原因は何だったのか?」「団体としての責任は果たせたか?」そして「どのように改善していくべきか?」と締めくくります。
今年、何度も話題になったことは海外団体から繰り返し語られた「自己責任」の意味、ならびに「まだ高校生なのに…」vs「もう高校生だから…」という考え方の違いでした。
An American Boy Grows Up
1973年に発表されたアメリカの映画俳優ジョン・ウェインの朗読アルバム“America Why I Love Her”の中に “An American Boy Grows Up”という詩があります。今から46年前のものですが、現在のアメリカにおける子供の育て方の考え方とあまり変わっていないと痛感します。そして、ここに「まだ高校生なのに…」という日本側の考え方、「もう高校生だから…」というアメリカ側の捉え方の違いが出てくるのではと、改めて何度もCDを聞き直しました。
アメリカ人の家庭に男の子が誕生してから高校を卒業するまでの成長の過程を父親の視点から描いているこの詩から、ある意味、典型的な「アメリカ文化」そして「アメリカ人の考え方」に触れることができます。小学生の頃からお小遣いを稼ぐために新聞配達を始める、高校で使う教科書の量の多さに不満を漏らす息子に「どの選択肢を選ぶかはあなた次第」と本人に答えを考えさせ、責任は自身にあることを伝える、アメフトのチームに入っている息子のゲームを見ながら、勝つだけでなく、負けることを通して成長している姿を見守る、そして、高校を卒業したと同時に親の元を離れていく…欧米の文化では、高校を終えたら家を出ていくということは当然のこととして捉えられ、高校時代は大人の世界に入る最終準備段階であると考えられています。「自己責任」の重さも最終準備段階に入る前に教えられています。
これらを留学生として海外に派遣される高校生たちならびに保護者の方々にどのように理解していただくかがこれからの課題になるかもしれません。
An American Boy Grows Up
原文はこちら
Our son was born so long ago yet it seems like yesterday
that I stood, awed, before his crib and heard the doctor say
"You've quite a boy there, Mr. Jones"
I could only answer with a nod, for his very being there I saw a miracle of God.
Later in his high chair, in a manner I deplore
I saw the miracle of God throw his oatmeal on the floor
I fixed him something different, for I felt he must be fed
but when I turned around again, that bowl was on his head.
A few more years rolled along and he didn't spill things anymore
but his granddad sent a big bass drum and
once more I deplored the fact that my miracle of God
had a lusty taste for noise.
When he boom boom boom on that big bass drum
I questioned...boys must be boys
I asked his whereabouts one day
his mom said he's got a paper route
said he'd help earn his way
as he became a eagle scout.
When they pinned that medal on him
tears welled in my eyes
and I gripped his mother's hand
our boy had earned his prize
I won't forget that September day when he entered senior high
he had nary great excitement but he left home with a sigh
he came back that afternoon and gave us some puzzled looks
"Wow", he said, "This school is tough...look at all these books"
"Choice is yours", his mother said. You can pick the easy way...
what you put into life you get out of it.
Each man pays his price one day
He looked up and then he smiled. I saw he'd lost his gloom
He said, I'd better look at these"...headed for his room.
My son came home late one day...he seemed all worn out
I asked a little sharply what this was all about.
He spoke proudly and threw his shoulders back
in his eyes, I caught a gleam. "I wanted to surprise you, dad
I'm on the football team".
They won most of their games...lost a few.
Was a thrill to watch them play
When they didn't win, we knew he met the challenge anyway.
he didn't know it at the time, but it was a stepping stone
solid footing for the time he'd face life on his own.
How those three years flew past
when graduation came, we saw our boy grown up at last
our lives would never be the same.
I guess we've known all along what his goal would be
from that time three years ago when he chose responsibility
He stood in the doorway yesterday
put out a strong right hand...I held back tears
a uniformed boy to protect his land.
I shook his hand
His mother cried, "Son, why couldn't you wait"
embracing her, he softly said, "Mom, well. it would be too late
I promise I'll go back to school when I've met my obligation
to you, my friends, my girl, my school and most of all, this nation
I'll do all I can out there...
I know you'll both be trying to make everyone you know aware
we...we got to keep Old Glory flying"
and then his mother straightened up with a smile to hide a tear
she said, "We're both so proud of you
we'll feel lost without you here'.
Someday, you'll know what this moment means
when your boy shakes your hand
you'll watch him as he walks away
the day he becomes a man.
「ジョーンズさん、元気な男の子ですよ!」と医師から告げられた日のことを昨日のことのように思い出します。父親となった私はただうなずき、「神からの奇跡」を見つめていたものでした。
この「神からの奇跡」はしばらくするとオートミールをベビーチェアから床にこぼし、何とか食べさせなければと再度お皿に食べ物を用意して目を離した瞬間、お皿は彼の頭の上に乗っていました。
2,3年後、食べ物はこぼさなくなりました。しかし、祖母の送ってくれたドラムをたたき、大きな音を立てるようになりました。「神からの奇跡」は音に対してセンスがないことを悟り、そして、男の子はこのようなものなのだろうかと思ったものです。
ある日、母親に息子はどこにいるのかを聞いたところ、イーグルスカウトに入ったため、費用を自分で稼ぐのために新聞配達をはじめたとのことでした。
息子がイーグルスカウトで勲功バッジをつけてもらったのを見た時、涙が止まらず、「私たちの息子は自分でこの勲章を手にしたんだ」と母親の手を握りながら喜んだものです。
息子が高校に入学したある9月の日のことを忘れません。大興奮で学校に向ったのですが、帰宅した時にはため息をつき、戸惑った表情で「あ〜高校は厳しい...見て、このたくさんの教科書!」と私たちにこぼし始めました。
「どの選択肢を選ぶかはあなた次第。簡単な道を選ぶこともできます。収穫は自分が努力した分だけ得られ、そして、最終的にはあなた自身がその結果に責任を持つことになるのですよ」と母親は告げました。息子はその言葉を聞き、顔を輝かせて私たちを見ながら「これらの教科書、ちゃんと見ておかなきゃ…」と告げ、自分の部屋に入っていきました。
ある日、息子はいつもより遅く、疲れ果てて帰ってきました。私は息子に厳しく何をやっているんだと問いました。息子は誇らしげに、目をキラキラ輝かせながら、そして胸をはって答えました。「おとうさんを驚かせようと思ってたんだけど、僕、フットボールチームに入ったんだ!」
息子のチームはほとんどのゲームに勝ち、2,3回は負けました。息子が出る試合を見ることは本当に楽しかったです。息子のチームが負けた時も、彼が新しい挑戦することにぶつかったこと、その時には気付かなくとも、これが大きな成長への足場であり、彼のこれからの人生にとっては大切な一歩であることを私たち親はわかっていました。
高校時代の3年間はあっという間に過ぎ、卒業の日となりました。私たちはついに大人になった息子を見ながら、頭の中ではわかっていたつもりでしたが、私たちの生活は全く違うものになることを痛感せざるを得ませんでした。
昨日、私は陸軍の軍服を着て玄関に立ち、握手を求めてきた息子の手を涙をこらえ、強く握り返しました。
「もう少し待てない?」と泣く母親に彼は静かに語りました。「おかあさん、今行かなければいけないんです。あなたたち、友達、恋人、学校、そして、この国に対して自分自身の責任を果たした後、また学校に戻ることを約束します。
自分自身でやるべきことを行い、この国を守るために全力を尽くしたいのです」その言葉を聞き、母親は涙をこらえ、そして答えました。「あなたがいなくなるのは本当に辛いけれど、私たちはあなたのことを誇りに思います」
いつの日か、家を離れていく息子を見送る、子供が大人になるこの瞬間の親の気持ちがわかる日が来るでしょう。
2020年に向けて…
2020年は日本でのオリンピックが開催年ということで、歴史に残る年になることでしょう。より多くの人たちが幸せを感じ、そして平和な1年であることを祈っております。どうぞよいお年をお迎えください。
文際交流協会の年末年始の業務は下記を予定しております。
年末 12月30日(月) まで
年始 1月6日(月) 〜
なお、メールについては業務日にかかわらず確認しておりますので、
緊急の場合は bunsai@bunsai.net までお問い合わせください。