Ayanaのニューサウスウェールズ州(オーストラリア)への高校生-留学-体験談 10ヶ月目
こんにちは!11月も半ばとなり、年末も近づいてくる中、先日行われたアメリカの大統領選挙で世間は大騒ぎですね。さてさてそんな中、ついに私の留学生活も残す所2週間余りとなりました。日本に帰って家族や友達に会うときのことを想像したり、いざ日本での生活に戻ってどんなことが以前と変わって見えるのか考えたり、少しずつ帰国する心の準備を始めている一方、10ヶ月を共にしたホストファミリーや学校の友達との別れはやはり辛く、日に日に減っていく残りの時間とリミットを理解するのを避けてしまっている気がします。このレポートが最後となりますので、今回はオーストラリアでの生活の中で発見したことや感じたことを書いていきたいと思います。
2、3週間前、ホストファミリーと久々にシドニーをドライブしていた時のことです。ふと見覚えのある街並みと建物を見つけました。中に入ってみた所、そこは私がオーストラリアに上陸して初めの10日間、オリエーションのために過ごしたシドニー大学の学生寮でした。オリエンテーションの最初の1週間は日本人5人と付き添いのSCCE(オーストラリアの交換留学団体)の先生と過ごし、その後ドイツ、フランス、スカンディナヴィア半島、イタリア、アメリカ、カナダなど世界各国から来た留学生60人程と共に色々なディスカッションやアクティビティーをしました。始めの1週間はほとんど日本人5人で固まって行動したり、同じ部屋をシェアしたりしていたので特に問題はなく、段々とオーストラリアの気候や食事、生活スタイルに慣れていくことができました。
しかしその後の3日間、たった3日間ですが他国の留学生と出会い、色々な経験を通して良くも悪くも日本という国を初めて外から見ることとなり、とても中身の濃く、そして交換留学をする意味とするための覚悟の必要性を思い知らされることとなりました。今まで海外へ行ったことがなかった私は、まず他国の留学生を見て『でかっ!!!そして大人っぽい』というフィジカル面のショックを受けました。皆固まっているとさらに存在感が増して、なんだか自分がとても小さく感じました。
そして次に、全員ミックスで7つのグループに分けられて会話をしたり、ディスカッションをするのですが、他の留学生がバンバン意見を言っている中、英語力の自信の無さと、他のメンバーに圧倒されて、私は何一つ言えませんでした。しかしそこにいるのは全員交換留学生。皆やる気と希望に満ちていて、何事にも興味を持てる人たちでした。特に私のグループのリーダー格の女の子はとても気前が良く、頻繁に話しかけてくれたり、ビーチでのフリータイムの時には一緒に海に行こうと誘ってくれたお陰で私も少しずつ馴染んでいきました。他にも、なぜかフィンランド人の男の子と仲良くなったり、いずれは同じ高校に通うこととなるドイツ人のクリストファーに出会ったり、色々な国の人と話し同じ経験をすることで、次第に恐怖よりも新しいことを知ることの楽しさの方が大きくなっていきました。
そして最終日の夜、タレントショーの中で、日本人で浴衣や日本の制服を着て披露するプチファッションショーのようなものを企画したのですが、これが予想以上に他の留学生に受けて、興味を持ってくれたようでとても嬉しかったです。この場では語りきれませんが、とにかくこのオリエンテーションは留学を始める上でとても意味のあるものであり、今でも特に最後の3日間の出来事は鮮明に思い出すことができるほど、忘れがたい経験となりました。たまたま訪れたこの学生寮でしたが、10ヶ月前、スタート地点に立った私自身を振り返る良いきっかけとなりました。
このオリエンテーションが終わると、ついにホストファミリーと初対面し、家まで車で送ってもらいました。とても個人的な話なのですが、この日は私のステイ先の近くに住むというデンマーク人のジェイコブも車に乗せていきました。そしてシドニーからステイ先までの3時間、休むことなくジェイコブが私のホストファミリーと話し続け、たまにホストマザーが私に話を振ってくれたりしてもまともに答えられず、この3時間は信じられない程長く、ひたすら自分との葛藤で終わってしまいました。これがホストファミリーとの最初の出会いだなんてちょっと悲しかったですが今では笑い話にできる程です。そしてその後も、このジェイコブのホストファミリーが忙しい家庭だったため、私のホストファミリーは度々彼も一緒に連れて、ウォータースキーやフットボールの試合などにも連れて行ってくれました。ホストブラザー、シスター共に成人し、家にはいないので実際ステイ先に兄弟がいなかった私にとってはまあまあ楽しかったですし、私のホストファミリーを取られたくないからもっと話せるようになりたいという謎のモチベーションにもなりました。私はおそらく自分が負の立場にいる方が燃えるタイプなので、この経験を通して、ホストファミリーとの生活を始める上で、それ以前よりも積極的になれたと思います。
学校と学校の友達の存在も、もちろん留学生活では大事な部分です。私は正直1、2週間経った頃からホストファミリーに馴染みすぎてしまい、初めの頃はあまり学校での生活について考えていませんでした。初めて学校へ行った日、今では生徒会長の女の子が話しかけてくれて、その後もお昼や週末にも色々と誘ってくれて、幸いにも、案外簡単に友達はできました。しかし3ケ月程経った頃、自分がその友達と、その周りのグループの4、5人としかコミュニケーションをとっていないことに気がつき、焦り始めました。そこで ”socialize 活動” というものを始め、(詳しくは4ヶ月のレポートに書いてあります)友達の輪を広げられるようできる限りのことをしました。結果は予想以上に良く、またこの活動は友達を増やすだけでなく、心も陽気で明るいオージーになりきり、自分の殻を破るきっかけとなりました。
『理想の自分になりきること』は、他のカルチャーを学ぶ上でとても大切な鍵だと思います。私も始めは文化や価値観の壁にぶつかりました。今まで正しいと思っていたことがここでは正しくない、またはその逆も有り得る。特に一番大きな違いは「謙虚さを肯定するか否定するか」だと私は思います。自分から言葉や態度で表さないと、何を考えているか察したり気づいてはくれません。言いたいことを遠慮して大切なチャンスを逃してしまったという失敗を、私は何度も繰り返していました。でもそんな時、自分を責めたり無理に頭で考えても、文化や価値観が違うものは違うのだから、どうしようもないのです。『ここはもう割り切ってこの場の周りの人のようになりきろう!! Aussie! Aussie! Aussie!』と気持ちを180度切りかえ、ある程度適当に(良い意味で)楽に人と接するようになってからは、いつの間にか肩の力が抜け、友達の輪もグンと広がり、自分が日本人であることを忘れてしまうほどになりました。私はこれらの経験を通して、自分のアイデンティティーを保ちながらも、周りの新しいコミュニティーに同調していくことの難しさと、またそれをやり遂げた時の快感を知ることができました。
今までのレポートでも私のホストファミリーについてはあまり触れていなかったような気がしますが、「同調する」という意味では学校と同じくらい、もしくはそれ以上大きな所でしょう。まず、私のホストファミリーは多分、少し変わっています。でも私は本当に本当に私のホストファミリーを尊敬しているし大好きです。なのでこれからこの場に書くことも、決して不満を言っているわけではありません。
どの辺りが変わっているかというとまずはお家です。初めに驚いたのが、『鍵が無い、玄関も無い』ということです。一応門はあるのですが壊れているのでおそらく誰でも出入りできます。実際突然訪問者がちょくちょく来たりして、最初はちょっと怖かったですが、ここは田舎で物騒なところでは決して無いので多分大丈夫なのでしょう。そしてペットについて。私のホストファミリーは犬2匹、猫1匹、ポニー1頭、そして以前まで鶏4羽を飼っています。猫、ポニー、鶏は普通に落ち着いていますが、犬2匹は猟犬、しかも昼間は学校で働いているホストシスターの犬2匹も預かっているので計4匹、皆親子なので仲が良くて可愛いのですが、家の前の川とリビングを行ったり来たり、ソファーの皮を食べて中身の綿を全部出すはトイレットペーパーを全て転がしてしまうわで、一番初めに家に着く私にとっては、毎日かなり衝撃的な光景です。他にも車や身につけるものも、全く気にしないので綺麗ではありません。でも、それは『自分が周りからどう見られるか気にしていない』だけで、その分人一倍他人の幸せに積極的なのです。どんなに急いでいても道端で壊れている車があれば立ち止まり(私は故障中の車を何度押したことでしょう….) 難民のために大量に服や子供用のおもちゃを買ってきたり、私のためにも、キャンベラ2回、メルボルン、ブリスベン、ゴールドコースト、ニュージーランド、ケアンズ、シドニー数回….と数え切れないほど多くの場所へ連れ、体験させてくれました。日を積むごとに本当の家族のように信頼、尊敬するようになり、初めの頃ちょっとだけ今までの環境との違いにショックを受けてしまった自分を恥じるほどです。
私にとってオーストラリアで出逢ったホストファミリーはこれ以上ないくらい素敵で、人生の先生のような存在になりました。どんなホストファミリーに巡り合うかは本当に運ですが、私は留学する前から、よほど悪いことが起きない限りは文句を言ったりホストファミリーを変えたいと申し出たりはしないと決めていたし、実際変えたいなんて一度も思いませんでした。まずはどんなホストファミリーなのかよく知り、受け入れ、どうやって馴染んでいくか試行錯誤することも交換留学だからできる貴重な経験であり、将来どんな場 所にいても大切なスキルだと思います。同じように10ヶ月前までは他人同士だった私を、いつでも受け入れ、無償で迎え入れ、本当の孫のように育ててくれたホストファミリーには感謝してもしきれません。
素晴らしい出逢いに恵まれ、鮮やかな大自然の中で過ごした10ヶ月は、今まで感じたことのない感覚、感情や考えたことのないことを発見した大冒険のようなもので、約10ヶ月終えた今、何かに縛られていたものから解放されたような、身が軽くなったような、そんな気持ちです。信じられないほど快適で馴染みのオーストラリアでの生活を離れることは今は想像もできませんが、ここは今や私の第2の国であり、また自分を見失いそうになった時帰ってこようと思います。今はただ、もうあまり若くないホストファミリーがこれからも元気でいられるように祈るばかりです。
ありがとうオーストラリア!!Oi! Oi! Oi!
AYANA