Hinaのカンザス州(アメリカ)への高校生-留学-体験談 9ヶ月目
春の暖かさが爽やかな風に乗ってやってきました。季節の風は、アメリカでも同じ匂いがします。日本のことを思い、また大きくも小さくもあるこのひとつの地球が、繋がっているのだと感じながら、今このレポートを書いています。これで9回目のレポートとなります。時間が経つのは1カ月前に感じたよりもずっと速く感じ、決して時間を無駄にしている訳ではないのに、この止めることのできない時間を惜しく思います。
学校の授業は、先生からのレクチャーの連続ではなく、個人で作成するプロジェクトの授業があったり、生徒が個人で自分の宿題に励む時間が与えられることも多いです。日本の学校と違ってアメリカの学校は、比較的にレクチャーが中途半端に終わっても、生徒はチャイムが鳴ったらすぐに立ち上がり、次のクラスに向かいます。なので多くの先生は早めに授業を終わらせて時間に余裕を持つことも時々あります。私はその時間に、ある友達とアメリカの学校について私がどう思うかや、大学についての話などをしながら、意見交換をたくさんしました。私はふと、留学当初は間違った英語を使うことに恐れ、また自分の意見を人に話すことが苦手で、「このことについてどう思う?」という、単純な質問に答えることができずにいて、それ以前に会話もうまく聞き取ることにも苦戦していた過去の自分を思い出し、今は「会話ができている!」と、成長を実感しています。過去を振り返った時に今の自分の姿が見えるようで、どんな過去の経験でも積み重なっていくうちに、自分のためになっているんだと感じます。
私は、"デスティニー"という名前を持った、女子生徒だけが所属できる女声合唱のクラスをとっています。今月デスティニーは、ある学校で開かれた地区コンテストに出場しました。それは、州コンテストに出場するチャンスをもらえるもので、みんな緊張すると同時に、とてもワクワクしていました。いつもとは違う環境と舞台で、歌っている最中は互いの歌声が聞こえずに不安を感じながらも、録音した自分たちの歌声を後に聞いて、その美しい響きに、泣きそうになっているメンバーもいました。成績は、1が最高で州コンテストの出場決定で、2、3、4、5と低くなります。デスティニーに付けられた成績は2。州コンテストの出場は逃してしまいましたが、先生によると、1にすごく近い2だったそうです。先生は、「1をあげる価値のある歌声だった」と言ってくださり、デスティニーのメンバーも後悔していないようで、このコンテスト出場の機会は、とても良い経験となりました。
私が所属しているサッカー部では、たくさんの練習を積み重ねて、たくさんの試合を持ち、だんだんとチームの絆が深まっているのがわかります。試合で負けることも経験し、自分たちの弱点を見つけながら練習する中で日に日に強くなっています。バレーボールしか以前にスポーツをしたことがなかった私は、短い時間に何度も点数が入るバレーボールとは違い、90分の試合の中での数回のゴールのために走り続けるサッカーの楽しみを体験する毎日です。
日本にいる時からずっと夢に見ていたプロム。学校では、毎日大量に出るアメリカ史からの宿題に追われ、教科書を開いたまま寝る毎日が続いたりもしましたが、プロムのことを考えると、頑張って乗り越え、やり切ることができました。プロム前の一週間はみんなずっとワクワクしていて、友達と買い物に行ってプロムのためのアクセサリーを買い、学校ではどこからも「プロム楽しみ?」「ドレスは何色?」などの会話が毎日飛び交っていました。そしてプロム当日。プロムは夜8時30分からだったのですが、昼2時頃に私をプロムに誘ってくれた男の子が家まで迎えに来て、一緒に行動するグループと交流し、あらゆる場所に行ってたくさんの写真を撮りました。そこからパーティーバスに乗ってあるレストランに行き、そしてやっと、そこから学校に向かってプロムに参加しました。行く場所は違っても、これはプロムに参加する生徒たちがする伝統のようです。プロムは毎年テーマがあって、今年は"ギャッツビーのパーティー"(映画の "The Great Gatsby" から)で、プロムが行われた学校のカフェテリアも、そこに繋がる入り口も廊下も全てテーマに合わせて装飾されていました。プロムでは、参加した友達なども含めみんなでダンスを思いっきり楽しみました。プロムは夜12時で終了。その後ホストシスターと家に帰って、またすぐに学校に行きました。"アフタープロム"というものがあるからです。アフタープロムは12時から翌日朝の4時まで、学校の体育館を使って行われました。そこでは、様々なアクティビティーが設置されており、参加する生徒たちはお菓子を食べたり、フォトブースで写真を撮ったり、大画面で wii を楽しんだり、ただ座って話をしたりと、色々な楽しみ方がありました。アフタープロムのルールで、夜中に学校の外で学生が事件を起こしたりなどを防ぐために、アフタープロムが終わる朝の4時まで学校から出ることは禁止されていたので、私は4時まで友達とのんびりした時間を過ごしました。アフタープロムを含め、プロムは、確実に私のアメリカ生活でのひとつの大きな思い出となりました。日本にもこのような行事があったらいいなと、強く思います。
ある日学校で、留学生同士が一緒になる機会があったので、帰国の日を目前にしている私たちは、留学生のお別れ会を開こうということになりました。その話をドイツからの留学生が始めた時、私は何かが込み上げてきて、涙が出そうになりました。するとみんな、今は絶対泣いちゃダメ!と言って、必死でした。きっと私が泣きたい気持ちは、みんなが持っているんだなぁと察しました。ブラジルからの留学生は、私や他の留学生が帰国するよりも1カ月早く帰る予定で、アメリカでの生活はもう3週間ほどしか残っていないと言っていました。彼女は、「アメリカのホストファミリーや友達よりも、アメリカに戻って来ても会えないあなたたち(留学生)と別れを告げるのが一番辛い。」と言っていました。私は、留学生同士の出会いというものは、何にも換えられないほど素晴らしいものだと感じます。それぞれ夢は違っても、あらゆる国から集まった生徒たちが、アメリカというこの場所で同じ目標をもって学ぶ。彼らと交流をし、互いの文化を伝え合い、互いの違いを知って受け入れ合う時、留学生としていることの意義や素晴らしさを感じます。言葉では言い表せません。ただ、この出会いを、心から素晴らしいと思います。
1カ月というものは長くも短くもあり、卒業式が1カ月以内に迫り、帰国の日までも2カ月を切りました。1カ月の中で色々なことを経験するのに、1日1日をすぐに忘れてしまうものです。しかし、特別なことをしていないそんな日でも、留学生としてここにいる私にとって特別でない日なんて1日もありません。毎日ただ友達と笑いあったり、日本ではできないたくさんの経験を通して私は日々成長しています。何よりも思うことは、周りの人たちのおかげで私の毎日が特別になるということです。日に日に、時間が過ぎるのを速く感じる中で、私は"今"を大切にして存分に楽しみながら、1日1日を締めくくりたいと日々思います。