Ricoのミシガン州(アメリカ)への高校生-留学-体験談 6ヶ月目
冷凍庫のような寒さにも少しずつなれてきました。平均気温はマイナス20で濡れたタオルを振り回すと数十秒で氷のスティックになります。他にも沸騰したお湯を外に投げると一気に水蒸気になるなど、マイナス気温ならではの現象を見ることができました。
今月はミュージカルの本番に向けて必死に取り組んだ日々でした。放課後のリハーサルが毎日夜の10時まであり、朝家を出る時も学校から帰る時も外は真っ暗で窓を通してでしか太陽を見なかったように思います。
演目は"Young Frankenstein"という映画からミュージカル化された作品です。あの怪物で有名なフランケンシュタイン博士が亡くなった後、彼の孫が遺産を受け継ぐことになり博士の記録を元に新たな怪物を創り出そうという、ホラーと思いきや笑い満載のストーリーになっています。私はダンサーで、村人、ニューヨーカー、科学者、メイド、ショーガールなどと幅広く色んな場面に出させてもらいました。他の6人のダンサーたちとはよく振りを教え合ったりしました。タップシーンでは日本を離れる寸前に半年習ったタップがとても役に立ち、経験していてよかったなぁと思います。
1/18 ホストママの仕事の関係でシカゴに行ったのですが、せっかくだからショーを観ようということになりました。何があるか検索してみたところ、なんとYong Frankensteinが上演中ではありませんか!きっと新しい発見があるに違いないと急遽チケットを取ってくれました。劇場には大人しかおらず、私とホストシスターだけが場違いでした。(笑) ショーが始まり私のテンションは最高地点にありました。同じセリフやキャラクターなのにジョークの捉え方や話し方、セットの動かし方、使い方などの小さなことでこんなに違って見えるんだと感心しました。それと同時に私たちにないものを彼らは持っている、でも彼らにないものを私たちは持っているはずだ、もっと頑張ろうと思いました。ただの観劇記録のようになってしまいましたが…とにかく本当に勉強になりました!
計6回の公演。初日に向けて私たちの勢いは高まっていきましたが、それと同時に雪も強まっていきました。そして前日、なんと大雪警報によりショーを中止するようにと言われてしまったのです。あんなに頑張ってきたのに初日に幕が開かないなんて…キャスト一同、ショックを隠せませんでした。でもこうなったからには少しでも今日は長く稽古をして作品を良いものに、そして明日は体を休めるしかないと先生達が話をしました。
1/25 雪を乗り越え、ついに初日!いよいよ幕が上がります。キャストミーティングを終え、楽屋へ戻るとダンサーのヘアメイクや衣装のチェンジを助けてくれている友達からサプライズがありました。鏡に一人ひとりへ宛てた手紙が貼ってあったのです。彼女はアメリカでできた最初の友達で学校が始まる前から私のことを知っています。"Rico, when I met you, you didn't want to speak English. Now you can't stop speaking English. I'm so proud of you!..."「Rico、初めて会った時、英語で話すのをためらってたよね。でももう今は話すの止められないね。誇りに思うよ!…」本番10分前だというのに涙が止まらなくなりました。彼女に初めて会った時、私はとても緊張していて何を話していいのかもわからず、無口になり日本語で口達者な私からはかけ離れていました。理解できない、間違った英語を話したくない、会話が続かない…忘れかけていたあの頃の記憶が一気に蘇ってきたのです。今はこんなに皆と話すのを楽しんでいる自分がいる、私って変わったんだなと初めて思いました。彼女からの手紙は私の大切な宝物です。そしてなにより彼女は私の大切な親友です。
大急ぎで顔を直して、いよいよショーが始まります。やっと幕が上がった!と嬉しくて仕方がありませんでした。ここからはあっという間で次から次へと場面は流れていき、無事に初日の幕を下ろすことができました。その瞬間、嬉しさで舞台裏は大騒ぎに!公演の後はみんな厚化粧を落とさず、モンスターや老父などキャラクターのまま全員でハンバーガーレストランへ行きました。店員さんの戸惑った顔が今でも忘れられません。
2/1 ショーは回を重ねていき、いよいよ千秋楽がやってきました。この日は雪で中止になった公演を埋め合わせるため、二回上演することになりました。楽しみなのと同時に終わってほしくないという気持ちで押しつぶされそうでした。10月にオーディションを受けた時は全くお互いを知らず、あんなに緊張していたのに今は皆を家族のように思います。フィナーレで全員揃って拍手を浴びた時はこの学校にきて、みんなに出会えて本当に良かったと心から思いました。
数日後、少し寂しくなってふとパンフレットを開いてみるとびっくりするものを発見しました。なんと私の名前の横に"ダンスキャプテン"と書いてあったのです!初めの時点では全くそんな立場ではありませんでした。ダンスが苦手な友達と一緒に練習をしているうちに貰える仕事が少しずつ増えていき、先生が来られない日はリハーサルの進行までも任せてもらえるようになりました。専門用語がたくさん必要なため説明するのがとても難しく伝わらないこともありましたが、そんな時はみんなが質問形式で私の伝えたいことを引き出してくれました。みんなが私の"言葉"になってくれたのです。こんな素晴らしいチャンスを与えてくださった先生と、それを助けてくれた友達にとても感謝しています。みんな私の家族です。
この一つのミュージカルを通して本当にたくさんのことを学びました。英語にも変化があったと思います。少し前まで英語を話している時の私は本当の自分じゃないなと思いました。言葉が違うために思っている事と言っている事が噛み合っていない、気持ちが言葉に乗っていない、そんな気がしていました。ですが今は少しずつ英語が私色に染まっていくのを感じます。私の人間性が伝わるような英語を話せるようになりたいです。
もうリハーサルがないと思うと本当に寂しいです。今後の放課後は新しい何かが必要ということで苦手ながら陸上にチャレンジしてみようと思います!